測れないものを測る
理科探究の方法を簡単に述べれば、①自分自身の疑問に対して、②自分で実験法を考え、③実験の結果から結論にたどりつく、ということになります。実際には中学2年生。扱える実験器具も実験に関わる知識も、大人から見ればまだまだ初歩の初歩です。測定器具は、おそらく小学生と大差はありません。それでも、測らないと実験にはなりません。
実験は「測る」ことから始まります。長さ・時間・力・体積・色… 「測る」ことが実験の第一歩なら、その測り方を見つけることが科学的思考の第一歩です。実は、「測る」だけでも楽しいのです。測っている生徒たちは、生き生きとした顔をして「科学」と向き合っています。だからでしょう、測っている生徒のまわりには、たいてい他の生徒が集まってきて、手伝ったり数値が出るのを一緒に喜んでいます。
今年の2年生たちが、いま「測って」いるものを紹介します。
たとえば、シャボン玉の大きさ。浮いてただよっているシャボン玉に定規を当てれば壊れてしまいます。目測では不正確で失格です。Aさんは、下敷きと目盛りを記したサランラップだけで、正確にシャボン玉の大きさを比較できる計り方をみつけました。
B君は、固体を水面に落とした時に飛び散る水滴の量と広がりを記録しようとしています。水滴が飛び上がり再び水面に落ちるまでの過程は、ビデオ撮影では鮮明に写らないほど一瞬の現象です。彼はろ紙を利用して、水滴の量も飛び散る範囲もきちんと記録できる方法を工夫しています。
C君は腕相撲の際の力の大きさを計っています。エキスパンダーと物差しで、腕相撲の力が正確に測れました。彼は腕相撲の必勝法を科学的に見つけたいのでしょう。
Dさんは、電球の熱で溶けかけたチョコレートに自転車空気入れで勢いよく風圧をかけていました。チョコレートの軟らかさを比較する方法がもう少しで見つかりそうです。
測れないと思ったものを測る…と、生徒たちの工夫や試行錯誤を感心して見ていました。しかし、実はそうではないと気づき始めました。彼たちは測れないと思ったから工夫したのではなく、最初から測るつもりしかなかったのでしょう。特殊な機械を作らないと測れないと決めつけていたのは、私だけだったのかもしれません。そして、彼たちを科学において初歩の段階と決めつけていたのも、大人の頭の堅さでした。考えてみれば、科学する精神に初歩も熟達もあるはずはありません。
①測定方法を開発中
ささ舟の速さを測ろうとしています。うまく行くまで試行錯誤が続きます。周囲の生徒が手伝いに来ました。
②実験テーブル
一人ひとり、使う道具が違います。これは音の発生装置。実験ごとに探究ノートに記録していきます。
さて、10月3日、理科探究の中間発表として、生徒一人ひとりが学校見学に来た小学生にiPadを使って自分の取組みを説明します。師をも反省させた生徒たちの取組み、多少誇らしげでも許してやってください。 (教員 YH)